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2007年11月 8日 (木)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(3)~

<電脳インフラの効用>

電脳インフラはどの様な役に立つのだろうか。

第一に考えられるのは人々への情報提供だ。道路標識、電車バスの時刻表、立て看板、掲示板、ポスター、広告、etc、公共空間のありとあらゆる場所にさまざまな掲示物が存在する。これらは運行ダイヤが変更されたり道路が新設されたりするたびに人手により書き換えられているわけで、電脳化による効果は明らかだ。さらに進んで仮想掲示板になれば鋼材も紙もペンキもいらないわけで省資源にもなる。また、外国語表示や視覚障害者向けの音声や触覚・振動によるガイダンス等バリアフリー化にも役立つ。

このような公共インフラの電脳化に関しては電脳コイルと同時期(2007年第3四半期)に放送されたアニメCODE-Eを見ると良い。CODE-Eは現在と電脳コイルのちょうど中間の時代を舞台にしたアニメで、バス停の標識や広告看板・ポスターや学校の黒板が電子化されている様子が上手く表現されている。

第二の効用は道路・橋梁・建物・工場プラント等の資産の管理だ。官公庁、NTT、道路公団、大企業などは保有する様々な資産・設備の維持・管理のため膨大な労力とコストを費やしているにもかかわらず、最新の状態を正確に把握することは容易ではなく災害時や潜在的な欠陥を指摘された時などの対応が後手に回ることも多い。このため公共施設の設計データを3次元データベース化する研究や、機器などに管理情報を記憶したICタグを埋め込む研究などが現在でも行われており、電脳コイルの世界はこの延長上にあるものといえる。

第三の効用は、新しい技術やビジネスに必要な基礎情報を提供することだ。たとえば路線検索、ドライブナビゲーション、電子地図、自動翻訳などでは膨大なデータを人力により収集・入力しアップデートする必要が有り、基礎理論やプログラム実装だけではビジネスにならない。当然の帰結として先行企業は構築したデータベースを自らの優位性を固定するための武器と考えるから、新たなアイディアをビジネス化しようとする新参企業にとっては技術的な問題以前に投資対コスト面で先行企業との間に大きな差をつけられてしまうことになる。しかし従来、地理情報や交通網のデータなどは公共分野の担当分野ではなかっただろうか。インフラストラクチャーとは本来、単一のビジネスプランでは収益が見込めないが、社会の構成員が皆で共有・共用することにより大きな経済効果が見込めるような類の施設・事業のことを指す。公共空間の事物を網羅する包括的なデータベースは公共機関で運営され、社会のあらゆる構成員に平等に利用機会を与えることが望ましい。

第四の効用として、都市全域のあらゆる事物に関する情報を保有する電脳インフラは、人工知能などのアプローチだけでは解決困難な問題にショートカットを与えることができる。良い例として自動車の自動運転システムの研究がある。CMUなどで行われてきた従来の研究では、TVカメラで車の前方を監視し、画像解析によって道路の形状を認識する方法が取られてきた。この技術はコンピューターの処理能力が飛躍的に向上したことで次第に実用的なものとなりつつあるのは事実だがいかにも複雑な方法であるし、「コンピューターが道路形状を誤認識する事はないか?」「誰かが道路にイタズラ書きしたらどうなる?」などの疑問が残る。しかし、道路にICチップが埋め込まれ道路形状や路面状況などを正確に教えるシステムがあれば、より簡単確実な自動運転が実現できる。

似たような例として、盲導犬ロボットを開発する場合を挙げられる。本物の犬であれば簡単にやってのける「道路や物体を認識する」「人物を特定する」等の機能の実現は相当技術的難易度が高い。しかし、都市全域を覆う電脳インフラがあればこれらは大幅に簡略化できるだろう。

                                 -以上(次回からはメカニズム編)

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