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2007年11月

2007年11月28日 (水)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(10)~

<メカニズム: メタバグ(メタタグ、キラバグ)って何?>

メタバグとは古いバージョンの電脳空間にすむ電脳生物の死骸からできたもので・・・と言うのはお話の中の設定だが、現実のコンピューター技術で似たようなものが何か有るだろうか?

X-WindowWindowsのドメインではネットワーク上のリソース(ファイルサーバーやプリンタなど)を共同利用するけれど、そのために全てのPCにユーザーIDとパスワードを登録するのではユーザー管理が大変だしセキュリティーが保てない。そこでアクセス権管理を行っているのが認証サーバーだ。詳しい事を説明できるほど知っているわけではないが、要するにセッションごとに使い捨てパスワードみたいなものを発行しているらしい。分かりやすく言うと、期間限定の周遊券みたいなものをお客さん(セッションやプロセス)に対して発行し、それぞれのサービス担当者はこの切符が正当なものかどうかだけをサーバに問い合わせする仕組みだ。(らしい・・・、よくは知らない・・・、多分そうではないかと思う・・・)

メタバグと言うのは、旧バージョンOSの互換モードで実行中にクラッシュしたプロセスのメモリーダンプか何かで、セキュリティーが甘いためセッションIDや使い捨てパスワードを盗む事ができる、と考えたらどうだろうか?

そして、自分の書いたプログラム(メタタグや暗号式)にそれを組み込めばセキュリティーチェックをすり抜けて違法プロセスを実行する事ができると考えれば納得できる。

もう一つの疑問は、あの御札の模様や暗号式って一体何なのだろう?と言うことだ。何故、電脳チョーク書いた道路のいたずら書きがプログラムとして機能するのだろうか?

どうやらこの電脳インフラにはユーザーのジェスチャーやグラフィックパターンをプログラムとして認識する機能があるらしい。指電話や「カンナの日記」に出て来る「道順」などもその例だ。もしかすると道路のマーキングや標識なども、システムが読み込んで解釈して動作に反映するのかも知れない。いずれにせよこれはユーザー権限で実行するマクロやスクリプトのようなもので、本来たいしたことはできないはずだ。だから、メガ婆やイサコがやっている事は、ちょうどSQLインジェクションみたいに、ユーザー書き込み欄にプログラムを忍ばせておいてサーバに実行させてしまう行為だと思う。

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2007年11月25日 (日)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(9)~

<メカニズム: バスは走る ~移動する座標系とリアルタイム性の問題~>

23回の解説で「量子通信によって驚異的な大容量高速通信が可能になった」の一言で済まされてしまったのだが、このページはあくまで「現在の技術の延長線上で、可能なことと困難なことを峻別する」のが目的なので反応速度の問題を取り上げてみようと思う。

「メタバグ争奪バスツアー」でバスの車内が電脳化されている事が示されているが、これをまともに実現する場合反応速度の問題を考慮する必要が有る。

デジタルネットワークやデジタル放送の隠れた欠点はリアルタイム性の欠如である。例えば地デジ放送ではアナログ放送で問題にならなかった時報や災害時緊急放送の遅れが心配されている。これをご覧になっているパソコンの時計はインターネット上の時刻サーバーを使って同期されているはずだが、数秒から数十秒程度の狂いがあるはずだ。HTTPのリクエストからレスポンス+表示までの時間だって1/10秒以内と言うわけにはなかなか行かないであろう。

例えばユーザーがバスの中に立ち、座席や案内表示などの車内の物体を見ているとする。もし、これら車内物体が電脳管理局やバス会社のサーバーで管理されている(遠くの事務所に設置されたサーバーに問い合わせを行い、レスポンスを受け取ってから電脳体が描画される)ものであり、その位置がグローバル座標系で管理されているのだとしたら何が起こるだろうか?バスが時速60km/hで走行している場合、これは秒速17m/secだから、リクエスト~レスポンスに1/10秒かかるとするとその間にバスは1.7m移動することになる。これではバスの乗客から見ると車内の物体の電脳体が皆1.7m以上も後方へずれたり追いついたりを繰り返すことになり、車酔いどころの騒ぎではない。だから、バス車内の物体の位置は全て車内の座標系で管理する必要がある。おそらくバス毎にローカルサーバーを搭載するのだろう。

車外に目を転じてみるとさらに問題は深刻である。自動車を電脳ナビで自動運転するのに実物体と電脳体が最大で1.7mもずれていたら、交通事故だらけになるだろう。運転に必要な精度はセンチメートルオーダーだから、レスポンス時間1/1000sec1.7cmと言ったところが要求される(これに端末側の処理時間も加わる)。これを解決するためには道路上に多数のカメラとレーザーセンサーを設置して道路上の物体を検出し、道路周辺に設置したローカルサーバーで電脳ナビや電脳メガネの問い合わせに瞬時に答えるシステムが設置されるだろう。(同じことを個々の自動車の電脳ナビで行うよりは、皆で同じデータを共有するほうが合理的だ。)

要するに、車等の移動する物体(とその内部)の表示には、大変な高速レスポンスが求められるのだ。

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電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(8)~

<メカニズム: バスの床が抜けた 

 ~データベースのアップデートと自然物のとりこみ~>

「メタバグ争奪バスツアー」の回で、バスの床が抜けているのにデータのアップデートが行われていない場面があったが、これは「絶対あってはならない!!」ケースだ。建設工事に於ける死亡原因第一位は落下事故だ。階段や外廊下に手すりがない、エレベータのドアは開けっ放し、床の開口部の蓋がない、etc。電脳データ上はある筈の手すりや床がなかったり、ボロボロだったりって言うのはすごく怖い。アップデートできなきゃ全部“no data”とするべきだし、そもそも、工事現場や資材置場、廃工場、廃車置場に子供が出入りしちゃいけない。と言うか、それを防ぐのが電脳インフラの役目であろう。まぁ、しかしこれはフィクションであるしジュヴナイルものだから、廃工場や資材置場の冒険は定番なので外せない。

さて、全ての人工物(工業製品及び商品)にICタグを埋め込むとは言ったものの、廃材置場のガラクタや自然物、街路樹、野良猫、ハト、カラス、土砂、水、建物壁面のシミや落書きまでデータ化して最新状態を保つにはもう少し別な方法が必要だ。この辺の仕組みは「最後の首長竜」で説明されている。街中のあらゆる公共空間には監視カメラが設置されており、電脳空間中のオブジェクトを最新の状態に保っている。これによって路面のシミや日陰など黒っぽい部分(クビナガが通れる場所)が作られていたわけだ。画像だけから3次元形状を合成するのは処理が重く精度が悪いから、カメラにはレーザースキャナーも一緒になっていてこちらで得た3次元形状にテクスチャーを貼り付けるのだろう。

「いきものの記録」に出てきた電脳ペットによる盗撮行為は、既にネット上で議論されたようだ。電脳ペットは物理的実態の無いソフトウェアにすぎないのでマイクもカメラも搭載できるわけがない。あれは、以下のどちらかだろうと言うことで結論は一致している。

① 電脳空間上の物体(ICタグ等から取得した属性情報付の3次元データ)を見ている

② 監視カメラ画像(もしくはそこから合成した3次元イメージ)を取り出してきている

まぁ、ここまでの説明で分かるように、データベースがきちんとアップデートされておれば両者は一致するはずなのだが。

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電脳コイル ~番外編~

ちょっと脱線。

あと一回で最終回!25話では事の真相がかなり明らかに・・・・・

しかし、4423=イサコですか!

と言うことで、嘘八百の大胆予測。

1) 例の傷がある左手はイサコのものだった(なるほど夏でもデニムのジャケットを着ているのが理解できました)

2) ヤサコがチュッしてお嫁さんになる約束をした相手はイサコだった(もしくはノブヒコとイサコが混ざっていた)→どうするんだヤサコ、約束はちゃんと守れよ!

大間違い!「お嫁さん」ではなく「恋人」でした。(11/27修正)

3) ヤサコパパは実は潜入捜査官でメガマスを調査していた(ラスボスがパパではあまりに悲惨なので)。

4) 赤いオートマトン、黒いオートマトン、と来たので、Ver3.0は白いオートマトン(連邦の白いやつ)

5) オジジの死因が明かされる

 5)は最後に残ったナゾ。ヤサコがCドメインで迷子になったのは「オジジの葬式(お通夜?)」の夜のこと。なので、この時点ではオジジは死んでおり、イサコは既にCドメインからサルベージされた後のはずだ(あれれ、2と矛盾してしまった)。よって、ミチコが言っていたようにノブヒコにキスするヤサコを見たはずがない。

 もしかして、「オジジはCドメインを閉鎖する予定だった」「猫目宗助がその場にいて、父親の築いた業績を葬るのは許せない!とか言ってオジジのメガネを取り上げた」とか?

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2007年11月21日 (水)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(7)~

<メカニズム: サーバ側 ~デンスケは何処に居るか~>

さて、此処からはサーバ側の機能だ。電脳インフラ内の各種サービスはどのようにして実行されるのだろう。例えば仮想ペットはどのコンピューター上で実行されているのだろうか?

考えられるのが以下の4ケースだ。

① ローカル端末(電脳メガネ)

② お家サーバ

③ ペット会社のサーバ

④ 大黒市(電脳管理局)、メガマス社等のサーバ

どれも正しい。仮想キーボードや指電話位ならメガネ内で全て実行するのだろうが、電脳ペット位は皆で可愛がって楽しむものなので、次の様な役割分担が良さそうだ。

電脳メガネ(①)はユーザーが抱上げる等の接触判定やインタラクティブな操作を受け持つ。②のお家サーバーか③のペット会社のサーバがペットの行動や生育履歴などを管理する。ペットの動作や位置は周辺に居るユーザー全員のメガネに通知され、メガネ(①)はそれぞれの視点から見た3次元映像を描画する。一方、ペットやユーザーの位置、幾何形状、接触判定結果などはその空間を管理するサーバ(④)上で一つのデータに統合される。

④はちょっと「?」かもしれない。全てのユーザーが空間を共有する必要が有るのだろうか?他人が楽しんでいるゲームや電脳ペットまで見せられる必要が有るのだろうか?電脳コイルの世界の電脳インフラはそういった物なのだ。例えば、公園の一隅で電脳キャッチボールを楽しんでいる子供たちがいて、近くで電脳テニスをやっているグループがいるとする。ボールが飛んでいって、子供がそれを追っかけてくる。こんなとき、他人が何をやっているのが見えたほうが安全だし、新たなコミュニケーションの機会も発生する。だから。全てのユーザーが単一の空間を共有する事は必要なのだ。無論、学校や職場や個人の住居内などは物理的にも社会的にも仕切られた別空間だから切り離して扱ってよい。これが別ドメインと言うことになるのだろう。

しかし、全ての物体の接触判定情報を一元管理するのはとんでもない処理量になりそうだ。一つの空間内にN個の物体があると考えて、N×(N1)/2回の接触判定だ。多分空間を細かく分けて分散データベースにして、DNSみたいに階層構造にして順番に上位のサーバに問い合わせして・・・・・、などと妄想するばかりだ。

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2007年11月18日 (日)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(6)~

<メカニズム: RFID ~全ての製品にICタグを埋め込む~>
 電脳インフラ内ではあらゆる物体がデータ化され、現実の物体と電脳体が重なり合って存在している。これを実現するためには少なくとも人間の管理下にある人工物(要するに工業製品及び流通している商品)全てにICタグを埋め込む必要がある。これは現在進行中のことであり、RFID等の名前で知られている。ただし現在考えられているICタグの利用法はバーコードに近いもので、商品管理や資産管理さらに廃棄物のトレースなどが中心である。この場合ICタグに記録する情報は製品仕様や使用履歴などの管理情報と言うことになるが、電脳インフラで使うにはこれだけでは不十分であり、加えて形状と方角(おかれている方向)の情報が取得できないといけない。
 具体的に例えば包丁の例を考えてみよう。包丁の電脳体には利用価値がある。子供や視覚障害者が迂闊に刃先に触れないように、人の電脳体が切っ先に接触しそうになると警報を発するようにする、と言う利用方法がありそうだ。このためには包丁が今どの方向を向いているか、また何処から何処までが刃先で何処からがグリップなのかと言った問い合わせに包丁が答えられる必要が有る。要するに方向センサーを内蔵し、切っ先とグリップの数点に測位用の基準点を埋め込んでおかないといけない。これがハサミになると開きの角度も必要だ。
 洋服にももちろんICタグが埋め込まれる。連続アニメの登場人物はめったに着替えないから良いが、現実の人間はほとんど毎日服を着替えるので、「今どんな服を着ているか」の情報をICタグから取得する必要があるわけだ。問題は「人体が動いた場合服の形はどうなるか?」「皺やヒダはどうなっているか?」「重ね着の順番は?」等のもっと細かい幾何的情報だ。人の体のほうも髪の毛みたいに不随意にプラプラ揺れる部分の情報取得は必要だ。例えば、萌えアニメであればスカートがヒラヒラとか、胸元がプルンプルンとか当然あるわけだが、これをどうやって電脳体に反映するかと言う問題だ(まあこっちはNHK作品で登場人物は殆ど小学生なので問題ないのかも)。これらを全て電脳体に反映する事はもちろん可能では有るが、コスト対効果を考えるとあまり現実的とは思えない。

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2007年11月14日 (水)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(5)~

<メカニズム: 電脳メガネ(2) ~イマーゴ、電脳の体がズレる時~>

「ヌルに触れると電脳の体がずれる」「古い空間で電脳メガネを外すと魂が戻って来られなくなる」云々で違和感を覚えた人は多いはずだ。ゲーム機やアニメの画面の点滅で気絶するのと同じ現象ではないのか?たかがVRAR)ゴーグルで何故恒久的な脳障害を負うのか?と。確かにその通りで、あれはアニメの話を面白くするための小道具なのだが、一方で脳コンピューターインターフェース(作中ではイマーゴ)にも説得力はある。

そもそも「電脳の体」などと言うものが何故必要かと言うと、電脳インフラでは全ての現実世界の物体と電脳物質(仮想空間内の物体)の接触判定を行うため、ユーザーの肉体及び衣服や持ち物もデータ化してサーバ内においておく必要が有るからだ。問題は現実の肉体の動きに電脳の体がきちんと追従できるかどうかなのだが、VRゴーグルのデモを体験した事がある人なら分かるように、センサーやコンピューターの性能が相当良くないと動作にずれが生じいわゆるバーチャル酔いを起こすことになる。

ところで、人間の脳には「自分の肉体はこの範囲」とか「自分の右手は今何処にある」あるいは「自分はこれから手を伸ばしてコップを取ろうとしている」などといった感覚をつかさどる部位があるらしい。ラマチャンドラの「脳の中の幽霊」(及び続編の「脳の中の幽霊再び」)にはこの辺の機能に障害を負った人の症例として、「自分の片腕には他人の手が生えている」とか「(自分の体を指して)この体は死んでいる、腐臭がする」とか言い出す患者が紹介されている。そうであれば逆に、脳の働きに干渉して「自らの肉体に関する感覚」を騙すことで現実の肉体と電脳の体のズレや遅れの問題を回避できるかもしれない。

などと書いているうちに、お話のほうが進んで23回で解説が入ってしまった、やれやれ。イマーゴは「偶然見つかった解析不能の機能」ですか、何だか「神様から授かった霊魂通信機能」みたいですね。こう言われてしまうと突っ込みようがないや。まあ、SFで(フィクション)すから。

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2007年11月12日 (月)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(4)~

電脳インフラを構成する要素は次の3つに大別できる。

① 「どの物体が今何処にあるのか?」など現実世界の現在の情報を取り込むためシステム(ICタグや監視カメラなど)

② 現実世界に同期した仮想空間を造り、様々なサービスを提供するサーバー群

③ 仮想空間の物体を表示し、ユーザーの操作(体の動きなど)を検知する端末(電脳メガネ)

ちょっと順番が前後するが、分かりやすいところで先ず電脳メガネから考えてみよう。

<メカニズム: 電脳メガネ(1) ~万能携帯端末~>

電脳メガネはいわゆるVRゴーグル(正確にはARゴーグル)にPCそのものの機能を内蔵したものだから、多分こんな造りになるだろう。(図)

図 電脳メガネの概要

Dennou_megane_1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動作はざっとこんなふうだ。

① ユーザーの位置と頭が向いている方向を③GPSと④ジャイロ・加速度センサーから求める。

② サーバーと通信してユーザーの視界にある仮想空間内の物体の情報を検索する。

③ メガネ側のコンピューター機能(⑤)を用いて3次元画像を合成しディスプレイに表示する。ユーザーはハーフミラーを通して現実の光景と合成画像を重ね合わせて見る。

④ 仮想キーボード操作などの場合には、ユーザーの体の動きを⑦の動作検知機能で検知し、サーバーまたはローカル(⑤のコンピューター機能)で処理する。

細かく見ていくとちょっと難しそうな部分もある。例えばディスプレイとハーフミラーの部分だが、斜めに配置したハーフミラーは戦闘ヘリのパイロットみたいで大げさだし、だいいち子供が転んだら危ない。普通のメガネレンズの中にフレネル式の半透明凹面鏡を埋め込めば作品中に出てくる電脳メガネみたいになるだろう(図)が解像度は悪そうだ。

図 フレネル式凹面鏡を使った投影装置

(二枚合わせのプラスチックレンズの間に半透明ミラーを埋め込む。焦点位置を上手く合わせればめがねのツルにディスプレイを埋め込むことができる)

Dennou_megane_2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

F22ラプターのHUDはホロディスプレイと呼ばれているらしいが、ホログラムで仮想ミラーを作り出すことができるのかどうか私は知らない。あるいは光のビームを網膜に直接投影して描画する事が可能かもしれない。

GPSとジャイロには相当の精度が要求される。作品中のような使い方のためにはmm単位で位置決めが必要だ。おそらく、そこいらじゅうに位置算出のための基準点を埋め込むことになるだろう。だから、正確にはGlobal and Local Positioning System=GLPSが正しい。

動作検知機能は例えば仮想キーボードをタイプするとか電脳ペットを抱き上げると言ったユーザーの体の動きを検出するために必要になる。もっともメガネの位置からキータイプする指の先端はほとんど見えないので、何か付加的な装置が必要なはずだ。磯光男監督はインタビューで「リストバンドを装着すると手の動作をより正確にトレースできる」と説明しているが、これは確かに必要だ。

現実の仮想キーボードについては下記アドレスに紹介記事がある。机の上に文字盤を投影しておき、指の動きをレーザーで検出するものだが、装置自体はキーボードの向こう側に置いてある。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0827/tanomi.htm

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2007年11月 8日 (木)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(3)~

<電脳インフラの効用>

電脳インフラはどの様な役に立つのだろうか。

第一に考えられるのは人々への情報提供だ。道路標識、電車バスの時刻表、立て看板、掲示板、ポスター、広告、etc、公共空間のありとあらゆる場所にさまざまな掲示物が存在する。これらは運行ダイヤが変更されたり道路が新設されたりするたびに人手により書き換えられているわけで、電脳化による効果は明らかだ。さらに進んで仮想掲示板になれば鋼材も紙もペンキもいらないわけで省資源にもなる。また、外国語表示や視覚障害者向けの音声や触覚・振動によるガイダンス等バリアフリー化にも役立つ。

このような公共インフラの電脳化に関しては電脳コイルと同時期(2007年第3四半期)に放送されたアニメCODE-Eを見ると良い。CODE-Eは現在と電脳コイルのちょうど中間の時代を舞台にしたアニメで、バス停の標識や広告看板・ポスターや学校の黒板が電子化されている様子が上手く表現されている。

第二の効用は道路・橋梁・建物・工場プラント等の資産の管理だ。官公庁、NTT、道路公団、大企業などは保有する様々な資産・設備の維持・管理のため膨大な労力とコストを費やしているにもかかわらず、最新の状態を正確に把握することは容易ではなく災害時や潜在的な欠陥を指摘された時などの対応が後手に回ることも多い。このため公共施設の設計データを3次元データベース化する研究や、機器などに管理情報を記憶したICタグを埋め込む研究などが現在でも行われており、電脳コイルの世界はこの延長上にあるものといえる。

第三の効用は、新しい技術やビジネスに必要な基礎情報を提供することだ。たとえば路線検索、ドライブナビゲーション、電子地図、自動翻訳などでは膨大なデータを人力により収集・入力しアップデートする必要が有り、基礎理論やプログラム実装だけではビジネスにならない。当然の帰結として先行企業は構築したデータベースを自らの優位性を固定するための武器と考えるから、新たなアイディアをビジネス化しようとする新参企業にとっては技術的な問題以前に投資対コスト面で先行企業との間に大きな差をつけられてしまうことになる。しかし従来、地理情報や交通網のデータなどは公共分野の担当分野ではなかっただろうか。インフラストラクチャーとは本来、単一のビジネスプランでは収益が見込めないが、社会の構成員が皆で共有・共用することにより大きな経済効果が見込めるような類の施設・事業のことを指す。公共空間の事物を網羅する包括的なデータベースは公共機関で運営され、社会のあらゆる構成員に平等に利用機会を与えることが望ましい。

第四の効用として、都市全域のあらゆる事物に関する情報を保有する電脳インフラは、人工知能などのアプローチだけでは解決困難な問題にショートカットを与えることができる。良い例として自動車の自動運転システムの研究がある。CMUなどで行われてきた従来の研究では、TVカメラで車の前方を監視し、画像解析によって道路の形状を認識する方法が取られてきた。この技術はコンピューターの処理能力が飛躍的に向上したことで次第に実用的なものとなりつつあるのは事実だがいかにも複雑な方法であるし、「コンピューターが道路形状を誤認識する事はないか?」「誰かが道路にイタズラ書きしたらどうなる?」などの疑問が残る。しかし、道路にICチップが埋め込まれ道路形状や路面状況などを正確に教えるシステムがあれば、より簡単確実な自動運転が実現できる。

似たような例として、盲導犬ロボットを開発する場合を挙げられる。本物の犬であれば簡単にやってのける「道路や物体を認識する」「人物を特定する」等の機能の実現は相当技術的難易度が高い。しかし、都市全域を覆う電脳インフラがあればこれらは大幅に簡略化できるだろう。

                                 -以上(次回からはメカニズム編)

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2007年11月 6日 (火)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(2)~

<電脳インフラの概要>

電脳メガネは拡張現実(Augmented Reality)と呼ばれる技術である。かつて一世を風靡した仮想現実(Virtual Reality)では単に仮想空間中の物体をVRゴーグルに表示しVRグローブなどを用いて触感と操作を実現していた。拡張現実(AR)では現実の物体に重ね合わせ(Overlay)て「その物体に関する情報」と「仮想上の物体」を表示し、操作を可能にする。このためには対象となる現実世界の物体に関する最新状態を取得してコンピューター上のデータベースと同期しなければならない。

ひとつの都市を覆いつくす拡張現実(AR)環境を実現するためには壮大なシステムが必要となる。都市内の公共空間にあるあらゆる物体の属性情報・位置・状態を瞬時に取得するためには、全ての製品にICタグ(RFID)が埋め込まれ、あらゆる空間にmm単位で位置を特定する座標測位システムが張り巡らされ、あらゆる街角をカメラで撮影している必要がある。全ての建築・土木構造物は建設・改造の前に3次元設計データを提出し許可を受けるようになるだろう。

このようにして得られた情報に基づいてサーバ上のデータベースがリアルタイムに更新され、ユーザーに電脳メガネを介して様々なサービスを提供する。

                                             -以下次回

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2007年11月 4日 (日)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(1)~

ここ数年のアニメーション・SF作品の中でも「電脳コイル」はずば抜けた傑作と言っていいだろう。「トトロのキャラ+攻殻機動隊=ゆるいサイバーアクション学園アニメ」みたいな感じでスタートしたけれど、終盤に入ってからはホラー調になったり(ザ・インターネットかエネミー・オブ・アメリカみたいな)社会派ミステリーになったりと緊張感あふれるダイナミックな展開で目が離せない。

ストーリーの面白さもさることながら、アイディアが秀逸である。電脳コイルは単に「お化けが見えて、不思議な術が使える魔法のメガネ」を使う子供たちの冒険物語であるにとどまらず、公共インフラ電脳化の将来を具体的なビジョンで示した作品でもある。メディアではRFIDETC、ユビキタスコンピューティング、etc、様々な要素技術が毎日のように紹介されているが、それらをつなぎ合わせた将来の我々の生活がどの様なものになるかをこれほど雄弁に描き出した小説・報告書・映像作品・評論を知らない。これは産業省や国交省にとって最高のプロモーションビデオである。おそらく視聴者の中には産業省や国土交通省の若い官僚もいて、何とか再来年あたりの予算にアイディアを組み込めないかと思案しているのではなかろうか。鉄腕アトムや機動戦士ガンダムがロボット研究・開発に多大な影響を及ぼしたように、電脳コイルは今後数十年の公共インフラ電脳化を方向付ける作品になる可能性が高い。

さて、そうは言っても作品中の電脳インフラとは相当複雑な仕組みの様だ。どんなメカニズムなのかを想像しながら、実現可能性や問題点などを考察してみたい。

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