« F4Uコルセアの着艦問題に関する考察(その4、F4Uの特徴と問題点 尾翼)  | トップページ | WW2大戦機の主翼構造の考察(その1、スピットファイア、Me109) »

2009年4月 9日 (木)

F4Uコルセアの着艦問題に関する考察(その5、F4Uの特徴と問題点 結論)

 ここまで、F4Uが着陸寸前の状態で不安定となる原因として考えられるものを列挙してみた。もう一度まとめてみよう。
<症状>
 ① 従来の着艦アプローチでは発着甲板(特に誘導員)が見えない。
 ② 迎角が11.5°を超えると不安定になり、機体が左に傾く。着地と同時に機首が横に振れる(左右は不明)
 ③ 着地時にバウンシングを起こす。
<対処法>
 ① 従来よりも迎角を小さく保ち、緩やかなグライドパスで着艦アプローチを行う。
 ② 右翼に楔形スポイラーを追加。
 ③ 3点角を13.5°から11.5°に減少する。
 ④ 主脚オレオをソフトなものに変更。
<原因として考えられる項目>
 ①  逆ガル翼の折れ曲がり部の失速。(原因は谷型になった上面の負圧部か横滑り時の逆キャンバー効果かいずれか)
 ②  主翼付け根の気流剥離による昇降舵の振動、もしくは縦安定性低下。
 ③  プロペラ後流による左ヨー傾向(失速直前の迎角で急激に変化する)。
 ④  プロペラ後流による左内翼部の対気迎角増大と失速。
 ⑤  大迎角時に垂直尾翼が胴体の陰に入ることによる方向安定性の低下
 ⑥  ラダーロック

 残念ながら筆者にはこれらのうちの何れが真の原因であったのかを特定することはできない。①と④についてはこれまでも雑誌記事等で言及されている(ただし①については失速が何故起こるのか、具体的な説明したものは見たことがない)。②、⑤および⑥については具体的な証拠や既存文献での言及はなく、あくまで仮説である。③は尾輪式降着装置をもつ単発機の特性としては当たり前のことなのだが、F4Uの独特の形状と強力なエンジン故に深刻なものになったものと予想できる。
 いずれにせよ、F4Uの着艦困難は単一の原因によって引き起こされたのではなく、着艦寸前の迎角で複数の問題が同時に発生して着艦操作を困難にしていたと考える方が良さそうだ。横滑りも急な引き起こしも厳禁と言う制約の中で機体をだましながらアプローチパスに載せ、そろそろと母艦甲板に近づいたのは良いが、タッチダウンに備えて操縦桿を引いて行くと機体が右に左にと暴れ始め、復元しようとするとさらにおかしな挙動を始める。ようやっとタッチダウンに持ち込むと、今度はボヨーンとはねて機首が上がりバリヤーを飛び越えそうになる。こんな感じの複合的な症状だったのではないだろうか。
 重要なのは①~⑥のいずれについてもヨー、ピッチ、ロールの三軸の動きが相互に影響しあうことで起こる現象であると言う点だ。飛行とは立体的な現象であり、特に着陸や空中戦の場合は大きな迎角をとったり横滑りしたりしながら飛ぶものだが、三面図や風洞模型のイメージしか頭にないとそれを見過ごしてしまいがちである。F4U、強風、雷電などのデザインは機体が気流に正対してまっすぐ飛ぶことを前提にした机上の理論を基に発想されたように感じる。これに対してF6Fなどは、機首が大きく下を向き操縦席は盛り上がったように突出し尾部は垂れ下がったような形で、機体の水平線がどこにあるやらわからない。しかしこうすることで複雑な機動中も常に気流を捉えて機体を安定させ、同時にターゲットを視界内におさめることが可能になった。実戦的な機体と言うのはこう言うものだと思う。
 F4Uが高性能機であることは否定できないし、使い物にならないような欠陥機だったとも思わない。少なくとも細長い機体に強力なエンジンを搭載し、180~200kg/m^2程度の翼面荷重を選択したところまでは間違っていない。しかし、極端な逆ガル翼を採用したこと、燃料タンクやコックピットの配置などは失敗であったし、尾翼配置や動翼の形状にも問題があったと思う。それを解決したのは強力なエンジン等のアメリカの工業力と運用法等の改良を行った海軍・海兵隊の努力のおかげである。もしも、開発したエンジニアにもう一度同じ条件で設計してみろと命じたならば、たぶん違う形の機体を作り上げるに違いない。これが筆者のF4Uに対する評価である。

|

« F4Uコルセアの着艦問題に関する考察(その4、F4Uの特徴と問題点 尾翼)  | トップページ | WW2大戦機の主翼構造の考察(その1、スピットファイア、Me109) »

軍事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/212363/44619695

この記事へのトラックバック一覧です: F4Uコルセアの着艦問題に関する考察(その5、F4Uの特徴と問題点 結論):

« F4Uコルセアの着艦問題に関する考察(その4、F4Uの特徴と問題点 尾翼)  | トップページ | WW2大戦機の主翼構造の考察(その1、スピットファイア、Me109) »