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2009年6月14日 (日)

WW2大戦機の主翼構造の考察(その2、96艦戦、零戦、雷電)

Me109やスピットファイアのような左右別々に主翼を取り付ける方式は日本機では少なくて、翼胴一体式として主翼直後で胴体を分割する方式が多いことはよく知られている。

図 零戦の主翼構造(52型丙)

A6m5

三菱の場合96艦戦と零戦は二本桁方式を採用している。96艦戦の場合は引き込み脚も翼内砲も無いからどこでも自由に桁を通すことができたのに対して、零戦では主脚引き込み部のため主翼付け根・主桁前方では箱型断面構造が途切れ、翼内砲は後端が補助桁にスレスレの位置まで来ている。
平面でみると、機体規模の割に主翼・尾翼ともに大きめで、翼端を切り詰めた主翼はアスペクト比が小さくて寸詰まりに見える。大きな翼なのに、主桁は主脚に対して、後桁は翼内砲に対してそれぞれぎりぎりの位置にあり、外形のクリーンさと裏腹に内部はどことなく窮屈な設計に見える。また、作図をしていて感じたのが、スピットファイアやMe109に比べてやたらにチマチマしていて神経が疲れるということだ。単に小骨やパネル分割が多いと言うことだけではなく、配置に規則性がなくチョコマカと変化する。これは設計者がいい加減な仕事をしたのではなくて、構造の最適化を図った結果だと思うのだが、実際の軍用機は武装強化と補強の繰り返しなのでこう言った神経質な設計はすぐに破たんする。作図した末期の52型丙では主桁前の前縁部に3式13mm機銃を搭載、あちこちにアクセスハッチを設けている。こう言う強引な改造でせっかくの最適設計がボロボロのパッチワークと化しているのが悲惨だ。

図 雷電の主翼構造

J2m3

雷電は外観を見ると単に零戦をデブにしてファストバックにしただけのように見えるが、単桁構造の主翼を採用している点が異なる。単桁構造の利点は翼胴交差部分の空間利用(具体的には胴体内燃料タンクの形状)の自由度が増すこと及び、翼内砲の装備が容易になることだ。大戦後半になり戦闘機の火力増大が強く求められるようになったことが、単桁構造が多くなった理由だと思う。雷電の紡錘形の胴体は空気抵抗低減にあまり役立たず逆に視界悪化と表面積増大が問題となったが、少なくとも翼の構造は手慣れていると思う。特に目立つのが動翼部(尾翼を含む)の小ささで、この時期の三菱の技術者は最小限の面積の舵で優れた機動性を得るやり方を熟知していたらしい。

ところで零戦や96艦戦で主翼が胴体を貫通する部分でも上面に板を貼っているのかについてはどうも明確な資料がない。コンピューターによる有限要素法解析が使えない時代だから翼胴一体で構造設計することは困難であり(B17のような例外はあるが)、箱型断面が左右でつながっている一本の構造体として設計されたと考えるのが自然なのだが。どなたかご存じの方がいたら教えてほしい。

<参考文献>
1) “丸メカニック No.3 零戦 第一集”、潮書房、1977.3
2) “丸メカニック No.4 零戦 第二集”、潮書房、1977.5
3) “丸メカニック No.7 局地戦闘機 雷電”、潮書房、1977.11

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コメント

河口湖のレストア機体を見る限りでは、主翼のうち胴体が乗る部分には板が張ってあるように見えますが…

投稿: ヤマザキ | 2009年7月26日 (日) 23時21分

ヤマザキ様、貴重な情報ありがとうございます。
航空雑誌などでもこういう部分は案外に情報が少なくて困っていたところでした。
河口湖ですか。機会があれば見に行きたいところです。

投稿: SeaFurry | 2009年7月29日 (水) 18時50分

>ところで零戦や96艦戦で主翼が胴体を貫通する部分でも上面に板を貼っているのかについてはどうも明確な資料がない。
主翼正面をコクピットフロアとしているため。

投稿: | 2012年3月30日 (金) 12時00分

主翼上面

投稿: ↑ | 2012年3月30日 (金) 12時02分

子供の頃に呼んだ堀越さんの著書の中で主翼上面を操縦席の床とすることで、別個に床を作らなくて済む分軽くできるみたいな記述があったことを覚えています。

投稿: | 2012年3月30日 (金) 12時09分

えい出版 現存零戦アーカイブ
に大英戦争博物館(ロンドン)の
「輪切り零戦」の写真が掲載されているのですが
76ページの写真では
後桁の前方に張られた金属板が見えます
その上に、操縦装置が配置されていますが
同本105ページの知覧の零戦は
腐食があったせいか空洞に見えます
復元機ですが零戦32型の製造作業のDVDも付属しています

投稿: 羽布 | 2016年11月27日 (日) 19時42分

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