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2009年6月18日 (木)

WW2大戦機の主翼構造の考察(その3、1式戦、2式単戦、4式戦、そして3/5式戦、)

中島の戦闘機は97戦、1式戦の3本桁方式から、2式単戦の2本桁方式(変形)を経て、4式戦へと発展した。

図 1式戦の主翼構造

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最近アメリカで1式戦のレストア(レプリカだったかな?)をやった人に言わせると“1式戦の主翼は薄板を組み合わせた構造で主桁が無い”だそうだが、まぁこれは言いすぎで一応3本の桁が通っている。また、零戦や3式戦の主桁はトラス桁だが1式戦の主桁はIビームなので、桁が多いとはいえ上手く省力化している。左右の箱型構造(内部は燃料タンク)が胴体中央部でつながったシンプルな構造だが、二番桁と干渉するので翼内砲を装備できず大戦後半には火力不足に苦しんだことは有名だ。もっとも、わずか1000馬力のエンジンに対して際限無い重武装を求められた零戦の轍を踏まずに済んだことはかえって幸運だったのかもしれないが。
中島機の特徴である直線前縁のため主桁には前進角がついているが、この結果主桁が主脚引き込み部を避ける形になっている。ただ、この主脚は他の機体よりも車輪が一回り小さく、あまり高速で滑走するようには出来ていなかったようだ。古い世代の低速・低翼面荷重の機体だったことがわかる。

図 2式単戦の主翼構造

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2式単戦の主翼は2本桁と呼んでよいのか1本桁に分類すべきかよくわからない。後桁は細くて後縁に沿って折れ曲がった複雑な形をしている。二段テーパー翼の採用と併せて、薄い主翼内に翼内機銃を装備するための苦労の跡が見て取れる。また、内翼部と外翼部は翼内機銃収納部外側で分割できる構造だったようだ。2式単戦の翼は波板で下貼りした頑丈なもので850km/hでの急降下に耐えたと言うが、それだけ色々と手のかかった構造であった。

図 4式戦の主翼構造

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4式戦はそれまでの中島製戦闘機の集大成と言うか手なれた設計のもので、大きめの翼弦の主翼にホ-5 20mm機関砲を収め、同時に生産の省力化も図っている。構造は2式単戦と同様の変形2本桁方式で、後桁は翼内砲を避けるため少し折れ曲がっている。
4式戦はシンプルでスッキリしているので好きなのだが、じっくりと主翼構造を見直してみると小骨の使い方やパネル分割処理が案外に雑な感じがした。特に気になったのが翼内燃料タンク部の下面パネルをねじ止めとしている部分だ。これは4式戦だけでなく零戦や1式戦など多くの日本機で見られる構造だが、この部分のパネルは旋回時に翼を折り曲げようとする力(機体重量の6倍以上)に耐える大事な部分なのにこんなもので良いのだろうかと思う(無論締め付けトルクの管理をきちんと行えば良いことなのだが)。

図 3式戦の主翼構造

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川崎の3式戦・5式戦は二本桁構造で主翼の箱型構造が左右つながった一体翼の上に胴体が乗っかる方式だ。この方式には、主翼全体の剛性・強度が確保しやすいことのほか、胴体を前後に移動させて重心調整できると言う利点があり、3式戦2型や5式戦開発の際に役立った。ただ、3/5式戦の主翼はアスペクト比が大きい(細長い)ため前後桁間の間隔が狭く、翼内にホ-5 20mm機関砲を装備することができず、やむを得ず機首上面装備とした。不思議なのはいわゆるマウザー砲(MG-151/20)は翼内に装備していたことだ。ホ-5はブローニングのコピーなので箱型の機関部を持つのに対してMG-151/20の機関部は少しスリムに見えるのでその違いだろうか。
3/5式戦は頑丈なことで知られているが、その翼桁は生産に手間のかかるトラス桁だし翼内砲装備に制約ありと言うことで、大戦後半の時期に大量生産するなら4式戦の方が有利だった。この辺も4式戦が零戦・1式戦に次いで3番目に量産された戦闘機である理由だろう。

<参考文献>
1) “丸メカニック No.9 二式単座戦闘機 鍾馗”、潮書房、1978.3
2) “丸メカニック No.8 四式戦闘機 疾風”、潮書房、1978.1
3) “丸メカニック No.2 三式戦闘機 飛燕”、潮書房、1977.1

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コメント

四式戦のパネルですが、碇義朗著の「決戦機疾風」によると機銃や燃料タンク周囲等の一部のパネルにおいては
開口部を広くしてネジの個数も減らす為にパネル自体の剛性を上げて機体構造の強度を受け持たせ
パネル周縁の構造側にパネルを止めるネジの断面方向の力を受け持たせるようにしてあるとのことです。
これによってネジを締め忘れで飛行中にパネルを飛ばすことが無くなったようですが
パネルが頑丈すぎて片側を締めると反対側が締められなくなって逆にやりにくいという不評もあったみたいです。

投稿: サ号 | 2010年3月18日 (木) 19時16分

とてもありがたい情報です感謝申し上げます。

投稿: futofutomomo | 2011年8月19日 (金) 22時03分

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